亡陽
−ゆうひ−



 町外れの高台。
 街を一望できる、最高のデートスポット。
 夜の重圧に耐えかねて、今にも沈みそうな夕日。
 夕日の飛び込みそうな勢いのアタシ。
 追いつけずに後ろを歩く彼。

 浴びる夕日が眩しくて、伸びるアタシの影。
 彼は踏み込めない。
 昔の恋人の陰から抜け出せていないから。
 彼の目に映るアタシは影。
 夕日が作った影?
 ううん。
 彼を縛る、昔の恋人の陰。

 大切な者を失う恐怖。
 避けれないコトの恐怖。
 繰返すコトの恐怖。

 彼は恋人を亡くした失意の人。
 彼の恋人は不治の病で亡くした。
 彼らは愛を、永遠を誓い合ってた。

「彼女は僕の全てだった」
 彼の口癖。
「僕が変わればよかった」
 彼の口癖。
「君はもう失いたくない」
 彼の口癖。

「どうしたの?急に…」
 いつも不安げで…。
「こんな所に呼び出したりして…」
 何かを窺う口調。
 …いつもの彼。

 アタシ、知ってるんだ。
 アナタは彼女のだって。
 アナタはアタシのじゃないって。
 アナタが求めているのは彼女…だって。

 …ダカラ…
 イチバンの笑顔で言ってアゲル。
「い〜コト…教えてアゲル」
 アタシがアナタに教えてアゲル。
 アナタが否定したいコト。
 たった一つの揺るぎない真実。

「アタシも死ぬんだよ★」
 







■ あとがき ■
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